「柘榴坂の仇討」を公開初日の初上映で観た。

客席は結構空いている。やはり年配の人が多い。
映画館は昔は若者が通ったが、今は年寄りの娯楽である。
監督は「沈まぬ太陽」の若松節朗。趣のある映像で、山田洋次の時代劇に負けていない。
冒頭、桜田門外ノ変で暗殺される井伊直弼が出てくる。俳優は中村吉右衛門。
直弼は老練な政治家のイメージがあるが、44歳で死んでいる。存外若い。
安政の大獄で人気のある吉田松陰や橋本左内を処刑したので、日本人には人気がない。
しかし、歴史は直弼が進めた開国路線を明治政府も踏襲する。誤った政策選択をした人ではない。
政敵だった徳川慶喜は直弼を「決断力があった」と評している。
吉田松陰も直弼が彦根藩で行った政治改革を褒めた。
歴史の評価をもう少し上げてもいい人物かもしれない。
さて、直弼が暗殺されたときに、近習として警護にあたった志村金吾が主人公。
中井貴一が演じている。
一人生き残った金吾は、彦根藩から暗殺を実行した水戸脱藩浪士の仇討ちを命じられる。
しかし、見つからない。生活は窮迫し、生き恥をさらしているような状態になる。
明治維新で回天し、徳川幕府も彦根藩はこの世から消えた。
にもかかわらず、金吾は二本差しの武士の姿を変えず、捜索をやめない。
金吾の妻のせつを演じた広末涼子が一皮むけた感じ。
語りが少なく、表情だけで演技し、以前の甘ったるさがない。
風雪に耐えてきた夫婦が手をつないで帰っていくラストシーンが感動的。
なかなかよろしいのではないでしょうか。